「21世紀HERO的HIPHOP CREW」をコンセプトに、ミドリ、ブルー、ピンク、イエローをそれぞれのカラーとした戦隊ヒーローのような出で立ちで(しかし1人は力士の格好だが…)、都内を中心にライブ活動を繰り広げるタガリータ。2009年1月、それまでソロラッパーとして活動をしていたYoucan(リーダー・タガミドリ・長男坊)が学生時代からの音楽仲間であるソロシンガーのアレックス・チャム(タガブルー・次男坊)と、Youcan主催イベントに3MCグループで出演していたガキんちょ。(タガリピンク・三男坊)を誘い結成。当初は3人で活動をしていたが、同年11月にDJおすもう(タガイエロー・長男ロボ)が加入して現在の4人編成となった、目立ちたがりの面々だ。
外見はむしろ20世紀的ともいえる戦隊ヒーロー(しかもTVというよりデパートの屋上やショッピングモールでのそれ)なのだが、「設定を含めた裏側まで、全部見せてしまおう」というのがタガリータが「21世紀ヒーロー」たる所以だ。アイドル然り、完璧であるよりも弱さや欠点もさらけ出して、丸見えの状態である方が現在らしいということだろうか。彼らが「出動」と呼ぶライブ活動でも、観客と一緒になった「参加型」のエンターテインメントを追及。親衛隊ともいえるファンたちは「タガリタン」と呼び、ベースにあるのは、「子どもの頃にヒーローショーを見たときに感じたワクワクした気持ち」(Youcan)だ。
「私たちはヒーローといっても、庶民派ヒーローなんですよ。たとえば〈ラブdaカラダンス〉という曲は、クラブで女の子とイイ感じになったけど、結局落とせなかったっていう話なんです。そういう恥ずかしい感情も私たちヒーローが積極的に出していくので、聴いてもらうみんなも『あるある!』って気持ちよく騒いでもらえるんですよね」(アレックス・チャム)。頼りないところが頼りになる?!といったところだろうか。
約1年半ぶりに、先月リリースされた2ndアルバム『ポケットタガリ』は、何と2枚同時リリース。「タガミドリとタガピンク」、「タガブルーとタガイエロー」の2組がお気に入りの楽曲をセレクトした2種類のCDが、1枚8曲入りで各千円で発売されている。「2つのアルバムには中身も全く違う曲が入っています。1stアルバムを出してからライブでも披露している曲と、未発表の曲がそれぞれ半分くらいずつですね。最初は16 曲入で1枚の普通のアルバムも考えたんですけど、それだとちょっと面白くないし、ライブをやっている現場の感覚からしても、1枚を二千円で売るより千円で2枚出した方が、より多くの人に聴いてもらえるんじゃないかなと思ったんです。たとえばライブで初めて聴いたイイと思った曲があったら、それが入っている方をとりあえず1枚買ってもらって、手軽に聴いてもらえれば嬉しいですね」(Youcan)。
実際の楽曲は、4者4様の音楽的バックグラウンドが絶妙にブレンドされた、意外(?)なほどの正統派。トラックメイクはYoucanとおすもうの2人が担当するが、その作曲のタイプや発想の基が大きく違うので、いい意味でタガリータの世界観の幅広さへとつながっている。「僕はファンクバンドや日本のハッピーなラップに親しんでいて、おすもうはもっとゴリゴリの海外のトラックものが好きだったりする。同じHIPHOPでも全然違うものを聴いてきたので、ネタとなるものが違うんです」(Youcan)。各パートをそれぞれが自ら書くリリックにしても、例えばガキんちょ。は、音楽からではなくダンスからHIPHOPカルチャーに入ったこともあって、「ラップをしているというより、リズムと言葉の遊びにこだわっている」という個性の持ち主だ。
タガリータが歌う曲のテーマは、限りなく一般人に近い目線と言ってもいい。それは彼らが庶民のところまで降りてきているのではなく、ヒーローだって君たちと一緒なんだということを宣言しているかのようだ。ガキんちょ。は言う。「〈POWER〉という曲は、参加してもらったお客さんから力を貰ってタガリータがいて、タガリータから力を貰って俺がいるんだという、普段から感じてる気持ちを表した曲です」。そんな等身大なヒーローが繰り広げるエンターテインメントこそ、21世紀の我々を救うのだろう。
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