ヘア&メイクアッププロデューサーとして、映画、PV、TV、雑誌などで多方面に活躍するだけでなく、毎年パリコレにも参加し、自身のトータルビューティーサロンを経営する女性が、あるきっかけにより歌手としてデビューを果たしたと聞いたらどう思うだろうか。去年からmorphでもライブを行うSoah i(ソア イ)が、実はそんな女性だ。しかし、このことを聞いて思い浮かべたあなたの先入観は、間違っているかもしれない。
「自分って、自分のことをよく分らないなって、その方と会って気づいたんです」(Soah i)。その方とは、独自のメソッドでニコール・キッドマンらハリウッドの実力派女優などからも信頼を寄せられるアクティング・ディレクター、スーザン・バトソン。2009年にSoah iが自身のメイク術の本を出版したときに、スーザンが日本で本を出版して来日し、紹介されて会うことになったという。そこで訊かれたのが「あなたがやりたいことは何?」という質問。「仕事も充実してうまくいっているのに何を言うんだろう?!」と思ったSoah iだが、幼い頃の話をしているうちにこぼれた「私、歌手になりたかったの」という言葉に、「なればいいじゃない」。1時間の予定の会談は3時間を超え、「私に会いに1カ月NYに来なさいよ」と勧められた。初めは、そんなに長く仕事を休んで行けるわけがないと思ったSoah iだが、半年後には実際にNYへ行き、自分の本来の欲求を見出す。
「もちろん音楽をやることに反対する人は9割でした。でも今更ではなく、“今だからこそ”やるんだと。しっかり自分と向き合って、残りの人生で男性から見ても素敵な女性と思われるのはあと何年あるんだろうと考えた時に、今じゃないと自分がやりたいことがやれないかもしれないと思ったんです」。とは言っても、子どもの時の夢だけで急に歌手になれるだろうか?と思うかもしれない。しかしSoah iは、ヘア&メイクアップアーティストとしての仕事を始める前、実は10代後半から20代にかけて音楽活動をしていた時期があるのだ。韓国で生まれたSoah iは5歳からNYで育ち、15歳で帰国。17歳で訪れた日本で、儒教的な慣習が強く残る韓国と比べ、「同じアジアなのに、ファッションも女性も自由」と感じ、住みたいと思うようになったという。そして続けていた音楽では、日本のレコード会社やプロダクションと契約。しかし両親にも反対されて、周囲からなかなかサポートが得られず、その道をいったん諦めていたという過去があった。生活していかなければいけないので、オシャレやファッションが好きなこともあり、メイクや化粧品について勉強して、それを仕事にしていったのだ。
「最初は周囲にも言いにくかった」という音楽活動は、「勇気を出して自分から発信していくと、少しずつ応援してくれる方も増えて」道が開け、2010年4月、河村隆一プロデュースの「last nignt」でデビューを果たす。その後もライブ活動を続けながら、休止中のブランクと理想とのギャップにも向き合い、イチから前向きに進んで行こうと決意を新たにしている。「周りが良いと言っても、自分が本当に聴いてほしいと思った曲を歌いたい。若い時に1回妥協しているのに、ここでもう1回妥協してはいけないと思ったんです」。英語の歌詞は自ら書き、R&Bをルーツにしたエレクトリカルなダンスナンバーを中心に、バラードや洋楽のカバーなど幅広い音楽性を展開。じわじわとリスナーを魅了し始めている。
「私としては現代に生きる女性として、時代と一緒に歩んで影響を受け、若々しくいたい。それはファッションやヘアメイクの世界にいる時と同じです」。彼女には、1つの分野で成功を収めるまでに培った苦労や経験もある。「これまでの経験が歌や声の中に入っているので、特定のメッセージを伝えるのではなく、それぞれの人にどう伝わるか、いろんな響き方ができる歌を歌っていきたい」、そう実感を込めて話す。
3月にリリース予定の新曲「pray」は、1年前の東日本大地震を受けて、被災者や被災地を助ける人々たちへのエネルギーになればと作った曲。3.11以来、誰もがこれまでの価値観を再考させられたはずだ。本当の自分、本当に大切なものは何なのか。Soah iの姿を見ることで、新たな一歩を踏み出す勇気を、きっともらえるはずだ。
official site:
http://www.soah.jp/
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(Live情報) 2月23日(木) @morph-tokyo 『CANDY☆PANTS』
TICKET: 前売り/¥2,400 当日/¥2,900 (D別)
TIME: OPEN/18:00 START/18:30
出演:Soah i/クラマテング/RAYS/DECO MiX/隆弘-takahiro-