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 結成11年の今年5月にリリースしたフルアルバム『Atlas』が好調で、夏の全国ツアーも成功を収めたワカバ。昨年11月に発売された先行シングル「あかり」が、内閣府自殺対策プロジェクトのイメージソングに起用され、また東日本大震災以降、「命」というテーマへの共感が被災地のメディアでも紹介されたことで大きな話題を呼び、地元ラジオ局の招聘で、石巻でのライブも行なってきた。

 「シングルとして出して時間がたってからキャンペーンソングに選んでいただいたんで偶然なんです。もともとなかったミュージッククリップも新たにつくっていただきました」(松井)。シンプルな手描きのアニメーションによるミュージッククリップは、TVで紹介されると動画サイトで再生回数とコメント数が急上昇。楽曲のダウンロードやCDセールスにもつながり、幅広い層の人々に彼らの歌が届いている。それでも亀田は、「『あかり』に関しては、もちろんたくさんの人に聴いてもらいたいんですけど、ダウンロード数とかはどうでもよくて、実際にメッセージや声をいただくのが、作って良かったなって嬉しく思いますね」と言う。実はこの曲は、ワカバのファンの方が自殺をしてしまったことがきっかけとなって作られたものなのだ。「自分たちが生きていくなか、歌っていくなかで、どういう音楽を伝えていったらいいのか、すごく悩んだし、考えたなかで生まれた曲です」(松井)。

 「あかり」に限らず、『Atlas』というアルバム全体が、「命」をキーワードとしたワカバの原点回帰とも言える作品になっている。昨年、結成10周年を迎え、ワカバとしての力を最大限に発揮できる音楽についてメンバーで改めて話をしたことがきっかけだ。ワカバは、亀田大、松井亮太、塚本伸男の3人によるグループだが、塚本は介護福祉士として働く傍ら作詞のみを制作担当し、静と動の絶妙なバランスをみせる亀田と松井が楽曲制作とライブパフォーマンスを行なうという、異色のメンバー構成と活動を展開している。2000年5月に介護福祉の専門学校で出会って結成し、最初は人前で歌うのも恥ずかしかったため、世田谷の砧公園の売店脇の木の陰でこっそり歌いはじめたというのは語り草になっている。そこからストリートでの活動を積極的に展開していき、現在に至るまで大きくなっていったのだが、グループ名も「ワカバマークの初心者」という意味でつけられている。

 「昨年、自分たちがこれまで音楽と向き合ってきたなかで、方向性や過去の曲など、反省も含めて、自分たちでひとつのものを作りたいという話をしたんです。そこから曲作りに入りました」(松井)。もともと介護福祉を志していた彼らがたどりついたキーワードは「命」だった。そして自分の言葉でしっかり想いを伝えるということ。「まず自分たちのことばを大事にしたいというのは3人とも共通にありました。10年続けてくるなかで、これまで正直自分たちの言葉が出ない時期もあって、自分たちで歌詞を書かないこともあったんです。でも今回は、シングルで出した『あかり』からアルバムも含めて、自分たちの言葉で作っていこうという思いは強くありました」(亀田)。その結果は、前述のように今年になってしっかりと実を結んでいる。10年とひと言で言うのは簡単だが、そこには1年1年、1日1日の努力の積み重ねがあるのは言うまでもない。

 morph-tokyoもこの10月で9周年を迎える。ワカバにはオープン時から出演してもらっていて、いろいろと思い出もあるだろう。「最初は、六本木だし、内装とかもオシャレという印象でしたよね。三日連続でワンマンライブをやったり、自分たちがやりたいことをやらせていただける場所なので、ホームと言ってもいいですし、10年やってきて1番ライブ回数の多い場所だと思います」(松井)。

 今月のmorphでは、恒例の周年イベントが連日開催されるが、ワカバの出演する10月21日(金)は偶然にも暦の上では「あかりの日だという」。エジソンが実用的な白熱電球を開発した日にちなんだものだが、今年はきっと、ワカバの音楽がmorphや来場のお客さんたちの心に灯す、特別なあかりになるに違いない。

official site:http://www.wakaba515.com/

Interview&text : Eiji Kobayashi


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