歴史をひも解くまでもなく、多くの社会では、その社会の仕組みは男性中心に構成されてきた。その問題は現在も解消されているとはいい難いが、職業に限ってみても、弁護士や建築家、パティシエや築地の仲買まで、様々な分野で女性が進出しているのは間違いない。音楽の世界でも、ソロアーティストに限らず、女性だけの編成のガールズバンドも珍しくなくなった。その中で、クラシックやジャズの分野では、歴史が古いだけに、まだ一握りの存在である。
でも、ちょっと思い起こしてみよう。中学や高校の吹奏楽部では、女の子が圧倒的に多くはなかったか？ 高校を卒業してから、彼女たちはどこへ行ったのだろう？ その答えの一つとして、今や全国のブラスバンドの憧れの存在として体現しているのが、今回紹介する女の子11人によるバンド、東京ブラススタイルだ。
2002年、もとはビッグバンドで活動していたホーン・プレイヤーたちが、小回りのきく編成でストリートで活動を始めたのがきっかけだった。知人を介してその輪が広がり、11人まで膨らんだ。そして、ジャズやスィウングだけでなく、クラシック、ラテン、ファンク、スカなど様々なバックグラウンドを持った11人11色の彼女たちが選んだ素材は、アニメソングだった。「誰にも馴染みのある曲をジャズ風にアレンジしたりして、もっと大勢の人たちに聴いてもらいたかった」
トランペット、トロンボーン、サックス（ソプラノからバリトンまで）、ドラム、ベース、キーボードからなる編成は、バラエティに富んだブラスアレンジと女の子の弾けたパフォーマンスで、国民的アニメソングの名曲に新しい命を吹き込んだ。吉祥寺や新宿などでのストリートパフォーマンスは、瞬く間に注目を集め、2005年にインディーズレーベルからアルバムデビュー。都内だけでなく、全国で行く先々コンサートやイベント会場のリスナーを魅了し、女の子ブラスユニットの草分け的存在として活躍し、成長していった。翌06年にはスタジオ・ジブリの代表的アニメ作品の主題歌をカバーした3rdアルバム『アニジャズ・ジブリ』をリリース。この作品がブレイクのきっかけとなり、ユニバーサル クラシックス＆ジャズと契約。07年８月にアルバム『ブラスタ天国』でメジャーデビューを果たし、現在まで精力的な活動をつづけている。
活動が広がる中で、新たなプロジェクトも始動した。オファーを受けた全国の中学高校に出張ライブへ行くだけでなく、吹奏楽部の生徒たちへのクリニックと合同演奏も行なう「放課後プロジェクト」だ。「どこに演奏に行ってもスタッフさんやお店の方で、吹奏楽経験者という方がいるんです。学校に行けば、実際に吹奏楽部は女の子たちが多いですよね。先生やその先のプロの人たちは男性ばかりだけど、私たちのような存在が、彼女たちの一つのあこがれ的なものになれたら嬉しい」。プロとして活躍する彼女たちと直に接することで、生徒たちにとっては将来のひとつの目標として、明確なイメージが生み出せていることは間違いないだろう。ユニット名に“スタイル”とつけたのも先見の明があった。彼女たちだけが特別ではなく（もちろん演奏は唯一無二のものだが）、一つのスタイルとして、「こういう活動もできるんだよ」と提示しているとも取れるからだ。実際、今では名古屋や北海道など、彼女たち公認の「ブラススタイル」が全国各地に誕生している。
そして、彼女たちの飛躍はついに海を越え、今年前半にヨーロッパでのCD発売が決定した。考えてみれば、ヨーロッパ発祥の管弦楽を手に、ジャズからスカまで世界中で生まれた音楽ジャンルのアレンジを駆使し、日本で生まれた「アニソン」を奏でる。まさに彼女たちこそ、グローバルな世界が生み出したハイブリッドな見事な果実ではないだろうか。「ヨーロッパ公演や世界ツアー、グラミー賞も狙いたい！」との願いは、決して夢ではない。 その欧州CD発売決定を記念してのパーティが、4/5（火）morphで開催される。「赤ちゃんから中高生、大人から年配の方たちまで、お客さんの年齢層がこんなに幅広いバンドはないし、誇りに思う」という、東京ブラススタイル。誰もが知る曲を斬新なアレンジでカッコよく、歌って踊れる盛り上がり必至のライブで、彼女たちの新たな旅路を祝福しよう。
http://www.brasta.jp/index.html
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(ライブ情報)
４月５日（火）
ブラスタ・パーティー 欧州ＣＤ発売記念ライブ
[会場]六本木 morph Tokyo
[開場/開演] 18：00/18:30
[料金]一般：￥3,500（前売）/￥4,000（当日）
学生（高校生以下）：￥1,500/学生（前売り）：￥2,000（当日）
