morph-tokyo
TOP SCHEDULE FREE PAPER FLOOR MOVIE Indies A Go Go! FOR A PLAYER ACCESS MAIL
Pick Up Artist


 毎回イチ押しのアーティストを紹介している本欄だが、今回は少し視点を変えて、「音楽プロデューサー」という仕事にスポットを当ててみたい。マイケル・ジャクソンにおけるクインシー・ジョーンズの例を出すまでもなく、作曲から機材・レコーディング技術にいたるまで、作品制作に関わるあらゆることに精通したプロデューサーは、ヒットを生み出すのに欠かせない重要な存在だ。ミュージシャンとしての活動を続けながら、これまでにBOOWY、GLAY、JUDY AND MARYなど数多くの大物アーティストを手がけてきた佐久間正英氏は、現在morphの看板バンドに育ったウラニーノのプロデュースも担当している。レコーディング準備中の彼らに紛れ込んでスタジオに伺い、そのプロデュースワークの秘密を聞いてきた。

 まずはプロデュース業のきっかけから。「音楽を自分でがむしゃらにやることももちろん好きだったけれど、音楽の構造的なことを理解することもすごく好きだったんですね。機材をいじるのも好きだったし、子どもの頃から海外のロックの歴史を見ていても、プロデュースの役割を目の当たりに感じていて、そういうふうになりたいなと思ったんです。楽曲のアレンジャーのようなことから始まって、次第にプロデュースに近い仕事になり、そのうちにバンドの依頼をされるようになりました」  実際にはどのような仕事なのか。「すごい具体的な仕事なんです。どう録音する、どう演奏させる、どう音を作るといった技術的な仕事が基本です。ただ、その“どう”というのを、バンドごとに探りながら、いい形を引きだせるように徐々に持っていくようにしてきます。ウラニーノの場合だと、3人の関係性がそのまま音楽になってると思うので、その関係性がいい感じのまんまだったら大丈夫っていうか、それを出せばその結果が彼ららしい作品になっている。音楽ってやっぱり最終的に人と人の関係だと思うんです」

 30年近くにわたって130以上のアーティストのプロデュースに携わってきた佐久間氏だが、その語り口は穏やかで、仕事に対する姿勢も驚くほど謙虚だった。 「たぶん僕が関わったアーティストに何らかの影響を与えているとすれば、彼らから僕も何らかの影響を毎回与えられています。どのアーティストでも、どんなジャンルのバンドとやっても、最初はよくわからないと思う場合も、一緒にやってるうちに好きになれるんですよね。それはすごく幸いなことだと思います。そういう機会じゃなければ好きになりっこないような歌でも、絶対に好きになれる。たぶんそれがプロデューサーとしてのひとつの資質なのかもしれません。ずっと続けていると、だんだん職業的な耳で音楽を聴いてしまうようになるんですが、それでは実は駄目だというのをある時点で気づいたんです。むしろ何も分からない素人が音楽を聴くような感覚をいつも保っていることが大切。それを維持するのに割合早く成功したことが長くやってこれた秘訣かもしれません」

 つねに時代の旬の若者たちを見てきて、最近の若いアーティストたちに感じる特徴は何かあるのだろうか。「やっぱり情報がたくさんありますから、取捨選択の上手い子は伸びるのが早いですね。でも30年前と現在の20歳くらいの若いバンドやってる子と比べても、基本的には変らないですよ、全然。よく世間で“今どきの若い者は…”って、いつの時代も言われるわけだけど、実際は人間ってこんなにも変ってないんだなって感じがします。しかも音楽やる子ってすごくいい子なんですよ。そもそも真面目じゃなきゃ楽器の練習をしようなんて面倒臭いこと思わないわけだしね。一般的な“まともな仕事”に就かないという意味で不良っぽく見られるだけで、彼らは一生懸命頑張っているし、職人的な真面目さというのは、ずっと変らないです」。それはまた、いつの時代にも、音楽が、音楽に打ちこむミュージシャンの姿が、僕たちに感動を与え続けてくれる理由でもあるだろう。

 最後に、今も日本中のどこかで大志を抱く若者たちへのメッセージをお願いした。「やっぱり基本は真面目にこつこつじゃないですかね(笑)。そして、“いつか上手くいくんだ”とは思わないことです。そうではなくて、いつか上手くいくように“する”こと。間違った夢の持ち方をする人は意外と多い気がするなぁ。努力をともなわないで夢だけを語らないで、具体的な目標を立てて、どんなに時間がかかっても、真面目にこつこつです」。そう、いくら敏腕プロデューサーの手にかかっても、一夜で大成するマジックなんかこの世にはない。チャンスは、準備のできた者にだけ、平等に訪れるのだ。

佐久間正英オフィシャルHP
http://www.masahidesakuma.net/

Interview&text : Eiji Kobayashi


Copyright 20085. morph-tokyo All rights reserved.