10年ひと区切りとよく言われる。ゼロ年代とかテン年代とか、ディケイドのことではなくて（仮面ライダーでもないよ！）、何か一つのことを10年継続してやることは並大抵のことではない。特に物事のサイクルの早い最近の世の中では。ただダラダラと過ごせばいいわけではなく、というかむしろそんな調子では続かないということは、日常でも誰もが経験したことがあるのではないだろうか。だから音楽なり芝居なり何かを表現する人にとって、10年というのは一つの大きな節目となる。2月7日にmorphでアニバーサリーライブを開く鷲尾昇もそんな１人だ。
演劇ユニット*pnish*のメンバーとして、東京芸術劇場、青山円形劇場などで1万人動員する公演を毎年開催し、個人としても大小様々な舞台に出演。別ユニット“サンティーズ”では音楽と舞台を融合した新しい活動を展開し、ソロでは作詞・ヴォーカリストとしてCDもリリース。と、現在はまさに八面六臂の活躍だが、これらもすべて10年間の日々の努力の賜物であることを彼自身が充分知っているだろう。「*pnish*は2001年に結成されたんですが、当時僕も若くて、何もできないのに仕事がもらえないとか不満ばかりを言っていました。養成所で知り合った現在のリーダーに声をかけられて、同じようにチャンスがなかなかない個人が集まって、劇団ではなく、それぞれの活動を基本にしながら注目を集めることをみんなで一緒にやろうというスタンスでスタートしました」
しかし、人が集まったからといって、すぐ活躍の場が拡がるわけではなかった。「活動を始めて２年ぐらいたったところで、知り合いや関係者のつながりだけではお客さんが増えていかない、もっと自分たちで開拓していかなければと気づいて、ストリートに出たんです」。街に出たことで、見ず知らずの人に足を止めてもらうのがいかに難しいかを痛感したという。「ミュージシャンと違って、歌詞やメッセージをすぐ伝えられるわけではないので、とにかく目立とうと、ダンサーじゃないのにルパン三世とかドラゴンボールのテーマ曲をかけて踊ったり、当時話題になってた武富士のCMのダンスを完全コピーしたり（笑）。それで足を止めてもらってから、自分たちは芝居をやりたいんだということを訴えてチラシをを配ったりしていました」。
学園祭や地方のダンスコンテストにまで応募したり、ショッピングモールのステージのオーディションを受けて、笑いやコントを織り交ぜながら、演劇をやってる人間にしかできないことを模索していたという。
「メンバーそれぞれが個人で舞台に出る活動で*pnish*のお客さんを獲得していった方が、実際の数としては多いんですけれど、いま振り返ってみれば、それまでにこういう活動をやってきたことが、すごく役に立っていますね。メンバー４人のそれぞれの個性の出し方だとか、惹きつけ方、そして何よりお客さんの有り難さを身にしみて感じます」。すべては役者として成長していくために。その貪欲な姿勢は、その後も変らずに継続している。歌というベクトルもその一つで、「ミュージシャンたちと知り合う機会も増え、その奥深さを知れば知るほど、歌手としてではなく、音楽の世界で得て発見したことを舞台に還すようにしようと意識的に取り組むようになりました」。更に30歳を機に始めた“サンティーズ”では、役者としてだけでなく人間としての魅力を磨こうと、富士登山や滝行に出かけたりプロの芸人と漫才をしたり、役者としては見ることができない姿を、駄目なところもすべてさらけ出しながらチャレンジしている。
“祝鷲（Iwai-Washi）”と名づけられた今回のアニバーサリーライブでは、これまで支えてくれたファンや仲間たちと、この10年を共に祝う盛大な感謝祭となりそうだ。ライブといっても歌だけではなく、トークやコント、スペシャルゲストも招いての盛りだくさんの内容だという。「*pnish*の活動も含めて、僕が人間的にも成長していったり一生懸命やっている姿を見てもらうことで、明日から頑張ろうとか、嫌なことが吹っ飛んだとか、お客さんがエネルギーをもらってくれることが一番嬉しい。そういった一体感や関係性が好きだし、それを会場全体で一緒に味わいたい」。
それは新たな10年へ向けての決意の時ともなるだろう。その瞬間に、ファンならずとも立ち会いたい。
鷲尾 昇オフィシャルブログ
http://ameblo.jp/pnish-washio/
*pnish*オフィシャルweb
http://www.pnish.jp/
（ライブ情報）
2010年2月7日(日) @morph-tokyo
鷲尾昇Anniversary LIVE
『祝鷲』 Iwai-Washi
〜鷲尾昇誕生から33年−1日＆役者 鷲尾昇誕生から10年をみんなと祝いたい!!〜
出演：鷲尾昇
【昼の部】OPEN/START 14：15/15：00 前売り/当日 \3,600/\4,000(1ドリンク込み)
【夜の部】OPEN/START 18：30/19：00 前売り/当日 \3,600/\4,000(1ドリンク込み)
