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  今回紹介するMIG MARKETは、都内のクラブやライブハウスで精力的に活動を展開し、3/9(月)にはmorphで初のワンマンライブを控えている注目のラップグループだ。当初はリーダーのBISCO(ビスコ)がロックバンドのギタリストと1998年にトラックメイキングのチームとして発足。その名は、MIGは「音の響き」から、MARKETは「ロックからヒップホップまで幅広くトラックを提供する」ということから付けられたという。初期メンバー脱退後のソロ活動を経て、幼なじみであり俳優としての顔も持つYOUZEE(ユージ)が加入したのが2001年。更に4MC、2MC時代を経て、2006年にTIBIC(チビック)が加入し、現在では「この3人以外では考えられない」という形となって今に至る。2007年にファーストシングル『STEP UP』を、2008年にセカンドシングル『SUNDAY MORNING』を発売し、言葉一つひとつを大切にした聴きやすいラップで、ノリの良いダンスチューンからじっくり聴かせるメッセージソングまで、幅広い楽曲で誰をも楽しませる。

 トラックを手がけるのは、BISCOとTIBIC。最初に彼らの曲を聴いて興味深いと思ったのは、ヒップホップをベースにしているというより、ダンスミュージックの要素が強いということだった。例えばセカンドアルバムの表題曲〈SUNDAY MORNING〉はラテンテイストのホーンに乗せられる軽快なラップが心地よく気持ちを盛り上げてくれるし、〈ハーイ! feat. m-nial〉は文字通りライブで盛り上がれるパーティーチューンだ。ストリングスをとり入れた曲もある。聞けばBISCOはヒップホップを聴き出してから、'80年代のダンスクラシックからソウルへと音楽的なディグに進んだという。 トラックメイキングについても「パソコンは使わない派で、楽器は弾かず、シンセサイザーやサンプリングした音を組み換えてつくる」のが主というスタイル。「でも最初やりたいと思ってたダンスクラシックが再現できなくて中途半端な感じになったのが、逆にオリジナルになってきたのかな(笑)」とも。

一方のTIBICは幼い時からピアノを習い、両親の影響もあって音楽はクラシック系から入ったのだが、BISCOとの出会いでシンセやサンプラーでのそれまでとは未知のアプローチに新鮮な驚きと楽しさを実感し、「'60〜'70年代のソウルが自分の身体にすんなり入ってくる」ことにも気づいた。ピアノをやっていた時は曲作りに興味はなかったのが、加入してからはリズムマシンやサンプラーを駆使しての制作で、BISCOとは対照的なミディアムテンポなトラックを得意とする。2人ともサンプリングはもはや一音単位で引っぱってくるレベルで、「この鳴りだけたった一音いただき!みたいに採ったりするんで、正直聴くジャンルも年代も関係ないかな」とBISCO。「オレらあまり普通に思うヒップホップらしくはないんだけど、超ダサいと思われてるけど自分たちの中では超カッコよくない?!っていうものを組み上げる作り方をしてるんで、精神的には元々のヒップホップの精神にむしろ近いんじゃないかという感じはしてますね」。そう、かなり芯は強いのだ。

 ではリリックはというと、3MCを活かして各自で自分のパートを書き、サビは話し合って協同してブラッシュアップしていく方法だ。どの曲もトラック先行で制作されるのだが、その後リリックへ進む過程で面白いのが、曲の世界観やイメージを他のメンバーに「プレゼンテーションして通さなければいけない」というミュージシャンらしからぬMIG MARKET独特の手法。後から加入したTIBICは最初戸惑って、プレゼンの参考書を密かに買って勉強までしたというが、「曖昧な“感じ”ではなく、事前に明確なビジョンを共有することで、最終的に良いものができる」と今は考えている。この方法の故か、彼らの曲はどれもブレがないし、完成度はとても高い。例えばそれぞれの学生時代の恋模様を綴った〈なんとなく〉では、「好きな女の子に好きと言えない甘酸っぱい気持ちを面白可笑しく」(TIBIC)というテーマで一曲の内に3話のオムニバスストーリーが見事に成立している。

 「クリエイティブな楽しさがあるかが唯一の基準」(BISCO)というMIG MARKET。ライブではその一体感が「その場の空気をどんどん取り込んで」いき、「オーディエンス参加型」と言われるステージには定評がある。彼らの「39(ミグ)の日」である3/9にmorphで見せるパフォーマンスには、ぜひ期待して参加してほしい。

Interview&text : Eiji Kobayashi


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