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 2007年も残すところあとわずか。今年はいっぱい有名人が死んだなーとか思いつつ、自分には何があったっけ?と、手帳をめくり返してみる頃だ。音楽好きなら今年観たライブのベスト5なんか考えて、ブログに書いちゃったりしてさ。でも決めるのはまだ早い、クリスマス前の12/22(土)、この業界を揺るがすこと間違いない大きな打ち上げ花火を見届けるまでは。我らがウラニーノが、関東平野の広がる埼玉から、六本木の地下巣窟を経由して、遂に、何と、あのC.C.Lemonホールでワンマンライブを敢行するのだから!!! 無名のインディーズバンドが無謀なことをって!? いや、きっとこれはあらゆる意味で語り継がれる伝説の一夜になるに違いない。

 さて、約1年ぶりに取材したウラニーノは、10/17にリリースされた4thアルバム『友達の彼女』を引っさげて、ツアー(=渋公チケット手売りの旅)の真っただ中。着実に実力と自信をつけ前進し続けている彼らは、毎回新作を聴くのが楽しみなバンドである。今作では「憧れの」佐久間正英氏をプロデューサーに迎え、決して物怖じすることなくウラニーノワールドが炸裂。今までの延長線上に“スタイリッシュかつアダルトな”新たな宇宙を展開させた。まさにインディーズ界の最高傑作!と叫びたくなるような、珠玉のマスターピースが詰め込まれた全8曲の見事な作品となっている。

 冒頭を飾る「6月のタイムマシーン」は、初期からウラニーノのモチーフのひとつであるメカ物だが、ポイントは女の子目線で歌っているところ。〈わたし、あなたの背中に額をあてて タイムマシーンに揺られていました/さりげなく本当に何気なく あなたと未来へ向かいました〉と、彼の“永遠の少年の心”をやさしく見守ってくれる。たとえそのタイムマシーンが、〈どこから見てもただの自転車〉だとしても。

 2曲目の「前進するビート」は、文字通り軽快なビートに乗せて明るく前向きに歌われる佳作。面白いのは、実は歌詞をよく聴くと、〈今風なミュージックは追いつけなくていつも苦悩して〉〈新しいかな おもしろいかな いつか届くかな/ぼくら変わっていくんだ 迷いながら〉と、曲づくりの逡巡を赤裸々に歌っているところ。山岸も「ストーリー調のある曲よりも、ずっとこっちの方が本音」と苦笑する。逆説的だが、そんな揺れ動く繊細な心が揺るぎないのが、ウラニーノなのだ。

 タイトルからして気になってしまう「エーデルワイス」は、これまた山岸の得意とする学校ネタ。〈両手で包み込んだ唾液の匂いの縦笛 今から君とキスするところ/興奮と罪悪感で汗ばむ手 高鳴る鼓動に合わせてエーデルワイスを吹いてみた〉……嗚呼、男子たるもの誰もが身に覚えのある記憶ではないだろうか!?  こんなことを歌にしてしまうのはウラニーノしかいないのだが、この光景が、今その女の子の結婚式の会場で回想しているものという構成がヒネリが効いてる。〈君に届かない 届いちゃいけない ぼくのエーデルワイスは/ずっとこの胸の奥で静かに奏でてる〉。そう、男はとことんセンチメンタルでノスタルジックな生き物なのだ。

 そして、現在のウラニーノの最前線、代表作となるであろう傑作が次の「大学生の悲鳴」だ。盗んだ自転車に彼女を乗せて、〈ラブホテルと化したぼくの部屋〉へ向かい、眠くてバイトも学校も休んでも〈寝る間を惜しんで君を抱こう〉とするぼく。やることはもっと他にあると自覚しつつも抜け出せない怠惰な日々が、説得力のあるディテールで描き出されていく。〈繰り返す混沌の日々にのたうちまわるぼくの抜け殻/ただれた唇から絶え間なくこぼれ落ちるため息〉。彼女のあえぎ声とないまぜになったぼくの悲鳴が体中を響きわたる。〈本当はもっと君のことを 丁寧に愛したいんだ〉と願いつつ……。大学生の抱える焦燥と倦怠、欲望と絶望の混濁をこれほどまでリアルに表現した曲は他にないのではないだろうか。切々と歌い上げる山岸のボーカルに涙が滲んでくるのは僕だけじゃないはずだ。

 本当に驚くべきことだが、この新作には、かつて「ヘボロック」とも揶揄されたウラニーノが、そのレッテルの膜の下で充満させた内なる真の“ロック”魂を爆発させ、本気でカッコイイと唸らせる力がみなぎっている。アルバム後半も、秘めた関係を匂わせて聴き手の想像力を刺激する「友達の彼女」、対立するイメージの言葉を絶妙に組み合わせてエロスとタトナスを描き出す「君といた夏」、決して輝かずに平坦なまま終わる青春の恐怖をあるエピソードで綴る「斉藤くんの場合」、遠距離恋愛特有の想いをスローバラードに込めた「月夜のデート」、と名曲がずらりと並んでいる。

 こんな唯一無二の宇宙を内包するウラニーノのロックが、あの大ホールに響きわたるのを想像するだけでゾクゾクするではないか。彼らのロケットがインディーズ圏突き抜ける歴史的瞬間を皆で共有しよう!

http://www.uranino.com/

Interview&text : Eiji Kobayashi


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