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 アーチストってやっぱコワイよなって、思った。とくに女は。もちろんイイ意味でである。いくらCDを聴いても、資料を読み込んでも、さらに直接会って話を聞いてみても、やっぱりライブを観なきゃ何もわからない。その夜もそうだった。それまで形づくられた印象が、脳天からガツーン!とやられて一気にひっくり返され、その体験はある種の快感をともなって脳みその深いところに刻みつけられ、40分間は永遠となった。

 白状すれば、この原稿のために渋谷のとあるライブハウスでライブを観た直後、オレは地上へ這い出て、しわくちゃになったフライヤーの裏の余白に、こんなことを書きつけていたのだ。

 彼女は愛をふりまく/彼女は叫ぶ、泣く、わめく/彼女はおどけて笑う/彼女は髪を振り乱す/彼女は全身で求める/彼女はギターをかき鳴らす/彼女は甘い声で誘う/彼女は獣となる/彼女はエクスタシーに達する/彼女はだれのものでもない……/彼女は天から墜ちてきた?

 いや、まずは冷静になろう__。Super Girl' Juiceは、ギター&ボーカルのさやか、ベース&コーラスのえつこ、ドラムのごみくんという3ピースのバンドだ。元々さやかとごみくんが活動していた打ち込み主体のユニットに、「やっぱり生の音でバンドがやりたいね」とえつこを誘って2005年に結成。今年1月には1st.アルバム『SG#001』をリリースして、ライブハウスを中心に活動の場をジワリジワリと拡げている。

 バンド編成の動機には、「打ち込みだといろんなことができてしまうので、楽器やパートもシンプルでストレートなものをやりたいと立ち返った」(ごみくん)ということがまずあったという。そしてそのために、キャリアも豊富で長くギタリストとして活動してきたごみくん(実は某有名バンドのギタリスト!)が、「一番下手な楽器」であるドラムをやることにしたというのが面白い。「上手いことが悪いことじゃないけれど、ギターに関していうと、下手だから出せるものってもう僕には出せないんですよ」(これは謙遜も誇張もないまったくの真実である)。さらにさやかには「フロント2人は女の子にしたい」という思いにもあったし、誘われたえつこにも、今までやってきた大所帯のバンドではなくて「君は3人が合うよ」とある人から予言のように言われていたというコインジデンスがあった。そんな3人が集まって、ぶつかり合い、笑いあい、生まれていく音楽。世界を変えるために「想像しなさい」と呼びかけるオノ・ヨーコの作品名とも共鳴して、このバンド名がついた。

 曲と詞はさやかによるものだ。バンドのコンセプトのとおり、その歌詞も、「女の子」という奇妙な生きもののパッションと行動原理がシンプルかつストレートに表明されている。 〈右手にはデザート チョコレートバー持って/お出掛けするの 高い高いとこ//はしたないアタシは 明日を待てない/お出掛けしよう Every night Every time Any time!//赤い口唇で 絶対残さず溶かしてみたい〉と欲望を訴える「CHOCOLATE BAR」。 〈断ち切れるまでに どれくらい?/あと何万回 泣けばいい?//あのコをさらってゆくなら あたしの秩序は壊れる/忌々しい!〉と失恋による世界崩壊を呪う「十戒」。 〈何か失くしたよーな/誰かが 泣いているとしたら/あたしは 愚かだ/自由が不自由になってく……/なんて おかしいよネ/傍にいてくれるのなら 不自由も愛すわ〉と存在論的不安のアンビバレンツな思いを歌う「ZERO ZERO HEAVEN」。

 そこには、厄介な恋愛事情に自ら巻き込まれていきたくなるような、何かこう無性にかき立てられるものがある(これはオレが男だからだろか?)。もっとも同性のえつこに言わせても、「(バンドに)2人女子がいますが、種類が違う部分がありまして、ピンクとブルーみたい感じですかね。私にもピンクの部分はあるんですけど、どっちかっていうとそこを隠すタイプなんですけど、そういう部分をポロンポロンと出せるのはスゴイ羨ましい(笑)」ということなのだが、どうだろう。

 さて、はたして今、オレは冷静に・客観的に、この原稿を書けているだろうか? CDをヘッドホンで聴きながらキーを叩いているところだが、あの夜の残像がありありと蘇ってくるのはいかんともしがたい。あの地下で、普段は飲まない酒を何杯飲んだだろうか。やめていた煙草を何本吸っただろうか。彼女が身体いっぱいにまき散らす“ジュース”をどれだけ浴びただろうか……。もはや逃れられない彼女の虜になっているのか?

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Interview&text : Eiji Kobayashi


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