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 昨年末のクワトロワンマンライブから半年、6月13日に好色人種の4thシングル「くもの糸」が発売される。今回のマキシシングルは、4曲すべてが異なるタイプの好色人種の多様な“色”で彩られながら、全体で生みだす一つの世界観は余裕に満ちて、よりスケールを増しているように感じられる。KAYO、MAKI、CON-DOOの3者が繰り出すリリックもオリジナリティにいっそう磨きがかかり、絶妙に絡みあいながら立ち上がる世界はリアルそのもの。「好色人種“第2期”の始まりなんです!」とKAYOとMAKIが声を大にして宣言するとおり、メンバー全員の生来の遊び心と音楽への真摯な姿勢が、まさに最上のカタチとなってあふれ出た充実作となった。

 タイトル曲〈くもの糸〉は、「一緒にいるだけで嫌なのに別れはしないという精神状態って何だろう?」という疑問から「倦怠期の曲を作ろう」と思ってできたというのだが、そこは好色人種、倦怠というよりも、男女の本音が一切のオブラートを排して真正面からぶつかり合うギリギリの関係(もちろん女強め)を臨場感いっぱいに描き出した、言わば女目線からの“三行半突きつけソング”となっている。「今すぐこっから出てって/どうしてボーッとしてんの/さぁプッチン寸前くもの糸/インドの山奥飛んで行け」という「サビが一気にできて、あとは悩まずに素直に書けた」というから、嗚呼オンナは怖い……。もちろんこのタイトルは、エゴイズムという人間の卑しさを見事に凝縮して描いた芥川の名篇を思い起こさせる。とすれば、この曲で本当のところ必至にしがみいついているのは誰だろうか?!

 つづいての〈爛漫◎エビバディ〉は、あの石井竜也氏のラジオ番組で、「3ケ月のOAの中で毎週練り上げて、好色人種×石井竜也で一曲作ろう!」という企画から生まれたコラボレーション作。提示された「春」というキーワードから拡がって、最終的には“フレッシャーズへの応援ソング”という、今までの好色にはなかったテーマの曲に仕上がったが、「一切合切の自分を出せよ/走り出せ有頂天モードで/大ドンデン返し起こしたなら/始まりはいつもそこから」といったメッセージはしっかりと彼らのものだ。普段の5人のメンバーでの共同作業自体が既にコラボ状態なだけに、その上でのコラボレーションは「かなり大変だった」ということだが、大御所とも十二分に渡りあって好色“色”を出しきっているのはサスガという他ない。「一つの作品の中にあらゆる角度からアイデアを盛り込んで立体的に組み上げる」という好色人種ならではのテクニックに、石井氏をして「ピカソみたいだ!」と絶賛されたアッパレな曲。

 一方、好色ファンには待望(!!!)のシングルカットとなった〈バカになりたい〉は、バンド結成当初に完成して以来、「いくつものバージョンが存在する」と言われるほど、数えきれない場所・時・観客とともに練り上げられてきた、好色人種を代表するナンバーだ。畳みかけるCON-DOOのナンセンスラップに身をゆだね、「バカバカバカになりたい/バカバカバカになりたい/バカバカバカになりたい」と声を合わせて叫ぶうちに、頭を渦巻く数多の煩悩は宇宙の彼方へと胡散霧消し、“解放感に満ちたカオス状態”とでもいうべき、言葉や倫理を遥かに超越した境地に達すること間違いない。「これからもずっと/バカでいたい/バカになりた〜い!!!」という全人類を代表する心の叫びは、あらゆる秩序を転覆させるアナーキーな革命ソングにもなる可能性を孕んでいると言ってしまおう。

 そして最後を飾るのは、CON-DOO裏十八番のラブ&ピースなファルセットボイスが胸に沁みるレゲエチューン〈新しい日々〜AFTER LOVE〜〉。実話(?)をもとにリアル実感から書き上げられた、別れの痛みを前に進む力へと昇華させたバラードだ。「新しい日々がボクを待ってるよ/あの日の笑顔で会えるその時まで/サヨナラが言えた今日が記念日さ」。オープニングの〈くもの糸〉へのオトコ側からの返答ともとれる、包み込む優しさにあふれた美しいナンバー。「ああ、そうさ、どんなに嗤われてもいい、これがセンチメンタルな「男」という生きものなんだ!(泣)」という僕らの声はちゃんと貴女に届いてるよね! 

 以上、今作が全曲A面と言って過言ではない史上最強の1枚となっていることを分っていただけただろうか?
「それぞれの強烈な5人の色をしっかりと出すことをこれまで以上に意識した」と語るように、「自分たちの持っている音楽性だけで勝負した、いい意味で誰にも媚びていない作品に仕上がっている」という自信に満ちた発言は、まったくもって本心だろう。ぜひともその耳で、彼らの「手垢のついていない裸の脳みそ」の味を確かめてほしい。そして7月のワンマンライブを皆で祝おう。好色人種のセカンドステージの幕が、いま高らかに上がる。

Interview&text : Eiji Kobayashi


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