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 ついに、だるま食堂のDVDが発売された! もちろんmorphの目と鼻の先に屹立する東京ミッドタウンに併設された大衆食堂の紹介ではない(ありえないが…)。このフリペの後ろのページでも毎月連載しているお笑いコントグループのだるま食堂である。なにっ、聞いたことあるけどまだ見たことないって?! あのハイテンションかつグラマラスな3色頭と巨大ボインの女性3人組を知らないだとー! お笑い好きを自認しているなら、それはちょいと怠慢ではないか。テレビに出ている若手芸人がすべてではない。第一、彼女たちは若手ではない、ほぼ20年の活動歴を誇るれっきとしたプロの芸人なのである。

 だるま食堂は、森下由美(ルーシー)、星野理恵〈ダイアナ〉、さとうかずこ〈マリア〉からなる3人組。もともとは演劇出身で、1980年代後半から90年代前半まで舞台・TV・CMなどで活躍、しばしの充電期間を経て、2000年より活動を再開。morphはもとより下北沢の小劇場から全国各地の親子劇場、浅草東洋館にいたるまで、パワフルかつエキサイティングなコントをモットーに活動中である。平成17年度には国立演芸場花形演芸会の審査員特別賞という名誉ある賞を受賞している。しかし、彼女たちの立ち位置はとても微妙である。バリバリの演芸畑のようでいて、演劇的な作り込まれた見事な笑いも合わせ持ち、ただのコントの枠にもおさまらない。セクシーボイスで見事な歌唱力を持ちながらも、今ではありえないようなベタベタの駄洒落も臆面もなく披露する。こうかと思ったらスルリと抜け出してしまう、とらえどころのない軟体生物のようであり、まさに何でもアリのネタの“食堂”なのである。

 元々ひとつのネタのキャラクターから膨らんでひとり歩き〈というか3人歩き〉してできたのがダイアナ、ルーシー、マリアによるコント群(ちなみに頭文字を並べるとダルマとなる)。morphでのライブはこのキャラクターを主に展開しているのだが、まず誰もが圧倒されるのがそのコスチュームだろう。ショッキングピンク・イエロー・グリーンのウィッグに、必要以上に飛び出た真ん丸の胸と尻。自信満々に上から目線で客席に語りかけられるセクシーボイスを浴びれば、もう思考回路は一時停止状態となる。そして呆気にとられているあいだに矢継ぎ早に繰り広げられるのは、大きな身体を揺り動かせながら軽快なリズムに乗った「51音マンボ」や「ボインボイン」「サンバ」といった、輪をかけて唖然とさせられる駄洒落のオンパレードである。見事なコーラスで聴かせる「魂の歌」に耳を傾けようとして突き落とされるオチの落差といったら、ナイアガラの比ではない。しかもそれを自虐でもなく大真面目にやっている〈ように見える〉。なぜかわからないが、彼女たちならアリと思わせてしまう強引なまでの説得力は、もはや誰にも到達できない境地だ。筆者など、帰宅後シャワーを浴びながら、自分でも無意識に「マンボ」を口ずさんでいたことに気づいたときの衝撃といったらなかった(そしてまぶたの裏にキラめく3色フラッシュ……)。

 そして、だるま食堂のメニューの中でもう一つの核となるのが、下北の小劇場などで開かれるワンマンライブで展開される、シュールなまでの通好みな深い笑いである。個人的にはこれぞ彼女たちの真骨頂と思っているのだが、空回りする3人のリフレインが倍々で笑いを膨らませる「おーい、誰か」や「誘拐」。孤独な老人ふたりの散歩と思わせ、実はカタツムリとナメクジでだった(そして人間に塩をまかれる)という、概念の転覆とスケールの伸縮が見事な「歩み」(DVDには未収録だが同じく観客の視点を反転させる擬人化を活かした秀逸なコントも多数)。いま見えているシチュエーションの裏や奥にもう一段深い世界の存在を想像させるこれらのレパートリーは、もとは演劇人であった彼女たちならではのものだろう(そう食堂の奥には調理場があるのだ)。ここにはテレビ番組のショーケース的コントでは味わえないステージがある。morphのショーでしか見たことのない人には、ぜひともDVDで体験してほしい。

 さらに構想5年(!)のこのDVDには、特典映像として、だるま発祥の地、高崎市にある少林寺達磨寺へ、ダイアナ、ルーシー、マリアが詣でる珍道中の模様が挿入されており、さらに3人が実際に達磨づくりを体験している様子も見ることができる(指導する職人のキャラにも注目!)。5月にはこれまでのネタからリクエストを募って発表する「だるまの毛」ライブが、10月には下北で一週間のロングラン公演「お床と女」の開催が決定しているので、ぜひHPもチェックしてみてほしい。

http://hw001.gate01.com/darumashokudou/

Interview&text : Eiji Kobayashi


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