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 5月24日に「ASIAN VABRATION」でメジャーデビューをはたしたASIAN2。長野県松本を拠点に1999年から活動する彼らは、ROCK/FUNK/HIPHOPなどをベースにした強力なサウンドと男気溢れるRAPを武器に、既に地元では圧倒的な人気を誇っている。実はmorphではいち早く目をつけていて、2年前にすでにこのページに登場してもらっているし、3月に大成功を収めた東京初のワンマンライブの会場もここmorphなのである。既に確固としたスタイルを確立し、更に前進し続けるASIAN2の揺るぎない信念とパワーはどこから来るものなのか。その中核メンバーであり、抜群の呼吸でリリックを畳みかけるMic TATSUとMic TWENTY“20”に話を聞いた。

2人が出会うまでのそれぞれの道のりはなかなか興味深い。TATSUは幼い頃からの友人であったドラムスのHIDEと中学2年の時にバンドを組んでいる。高校では「バンドどころじゃなくて遊ぶのに一生懸命」だったが、「10代後半の頃に将来につながるものとして真剣にやろうと」音楽に取り組むようになる。ただ 日本語のロックはみなカッコ悪く聞こえ、コピーするのも洋楽ばかりだった。一方TWENTYは音楽よりむしろ「中学の時から芝居がやりた」かった。そして高校の時にアメリカへ旅行した体験が決定機となり、「高校卒業したらアメリカへ行こう」と決める。

この時点で2人に共通していたのはアメリカへの憧れ、もしくはコンプレックスだったのかもしれない。「スポーツでは勝てない、歌を歌えば同じメロディでも英語の方がカッコイイ、スタイルも顔小さくて足が長いとか」(TATSU)。「単純にアメリカの生活スタイルが好きだった。服のデザインとか、英語の響きとか」(TWENTY)。戦後日本で生まれ育った若者なら誰もが一度は抱く思い。しかし、その無条件の刷り込みが括弧つきのものでしかないことを、2人は自らの道を歩みながら次第に気づいていく。

TWENTYは渡米後、ロスで俳優の勉強をしつつも、「日本人であること」からくる差別を受ける。「差別されることにショックというよりも、あっ客観的に見て俺って日本人なんだって」気づかされる。「勉強するのはいい、でもアメリカの映画に出たりとか、そういうのは何か逆に悔しい。日本で日本人の俳優使って作って、それが世界で評価されれることの方が魅力的に思えてきた」。そして日本でイチから映画の勉強をしようと帰国し、お金をためるためにバイトしてる時期に出会ったのがTATSUたちだった。誘われて一緒に遊んだり音楽やるうちに、始めは2、3回で終わると思っていたものが、彼らが自分と同じように「真剣に最後まで夢を追える人間だ」と解ってシンパシーを抱く。「全然近くにいたんだって(笑)」。

TATSUも変り出していた。「バンド始めた頃は音はカッコ良ければいい、全部英語でやろうと思ってたんです。でもやればやるほど変ってきますよね。メッセージ伝えなきゃとか、英語で書いた方が作品としてはキレイに仕上がるかもしれないけど、自分自身に失礼っていうか。逆に日本語って日本人しかしゃべらないじゃないですか」
 当たり前のことだが、自らのアイデンティティは自分で掴むしかない。それはルーツ探しというよりも、“今、ここ”にあることを確かなものにするための存在証明である。ASIAN2は、結成された時点で既にそのことに意識的であったバンドだ。だからこそ進む道にもはや迷いはなかった。

〈ASIAN VABRATION〉はそんな彼らを象徴するパスポート的なナンバーだ。弾けるエナジーの元に耳を傾ければ、そこには欧米礼讃もその対極にあるナショナリズムも結局は同じことに過ぎないことが鮮やかに暴露されている(ちなみにこのPVはTWENTYが監督)。同時に収録された〈ロシアン ビューティー〉では、リアルな生活苦に追われるサラリーマンが抱く夢のリッチライフさえも小馬鹿にしてみせ、紋切り型の価値観を揺さぶりをかける。一転して〈BGM〉では男のリリシズム溢れる極上バラードが胸に沁み、フロア沸騰必至なポップな〈RISKY〉で幕を閉じる。

さて、今のところ彼らは拠点を東京に移すつもりはない。もちろんライブはどこへだって出かけるが、「“音楽”なんだから別に東京行ってやらなくてもいい」(TATUS)。まったくその通り。MATSUMOTO、TOKYO、JAPAN、ASIA、ALL OVER THE WORLD……、彼らの音楽は駆け巡る。さあ君のヴァイヴレーションを共振させよう。

http://www.asian2.jp/

Interview&text : Eiji Kobayashi


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