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 新年早々に唐突だが、「言葉」とは厄介なものである。人間というものは、たとえば「ダンスや音楽を身体で感じる」とか言っていても、結局は「言葉」でものを考えている(この駄文をひねり出すのだってね!)。ネット空間でのチャットや初めて会った人同士でも、共通の「言葉」があるからこそコミュニケーションをとることができるのだし、何世紀も前に書かれた本や聖典だって、言葉(文字)があるからこそ、今も広く伝えることができるのだ。しかしその反面、形式張った挨拶の決まり文句や、愛のないラブレターなど、実感を伴わない言葉の羅列に辟易したり、うまく言葉を選べずにまったく違う意味を伝えてしまうことも多々ある。結局は、いかに自分の思考を的確な言葉に変換して表現することができるかということなのだが、そのためには実はそれなりの訓練が必要だということは意外と自覚されていない。

 さて、何でこんなことを長々書いてるかというと、実は今回のインタビューは、メールで行なったからである。アーティストが地方に住んでいるという条件もあったのだが、Lack Of Common senseの中心的人物である松田二郎にメールで一問一答形式で質問を投げ掛けたのは、ある一つの確信があったからだ。一応“ミクスチャーバンド”として括られるであろうLack Of Common sense(「常識の欠如」の意)は、久しぶりに表現の核が粗削りながらストレートに現れ、その試行錯誤の痕跡が見え隠れするものであった。そこには我々を取り巻く世界の現状を考察/理解した上でのポジティブなエネルギーと未来への強い意志がはっきりと感じられ、自らの欲求や衝動をオリナルかつ普遍的な“カタチ”として表れていた。「きっとコイツは思考と言葉の訓練を怠っていないヤツだ」。はたして彼はどこから来たのか? 以下はメールでの一問一答の一部である。

―まず興味深かったのは、歌詞にくらべて楽曲がとてもポップな仕上がりになっていることでしたが、それは意識的なことでしょうか?

「曲を作ってる時はもう本当に感覚だけです。表現というより“表出”。ただ、普段からわかり易さは意識しています。少しでもたくさんの人間に衝撃を与えるには難解すぎてはいけない。音楽は本やテレビとは違う媒体で、受け手も質が異なり、より感覚的だから」

―曲はいつ作りますか? 同じく歌詞は?

「感情の振れ幅が大きくなると曲ができます。携帯に録音したりするのでどこでも曲は作ります。歌詞は毎日書いてます。ちなみに今日最後にメモったのは“闘争と思考を接合”」

―ミクスチャーという手法の利点は?

リアリズムの融合です。巷でいわれるミクスチャーではなくて、精神のミクスチャー。マルコムX、ガンダム、宮沢賢治、Sing02、ボブ・マーリー、モーニング娘。、ピカソ、それぞれの精神をミックス」

―バンド名の由来は?

「“常識”というものに囚われていたら何も進化することはできない。懲り固まった価値観は、ネバネバの執着心を産むだけだ。芸術は枠からはみだすことであり、常に常識の欠如という観点がいる。(←はラッパーの正造からのコメント)」

―「教育」(または再教育)の重要性を感じるようになったのはいつからでしょう?

「同時多発テロをテレビで見て以来、深く戦争と平和を考えるようになりました。何日も悩んで何百冊も本を読み、人間性や人生について考察したんです。それでやっぱり先天的要素を論じるよりは後天的要素を論じる方が建設的、つまり教育だという結論にいたりました」

―日常生活でリアリティを感じる瞬間はどんなとき?

「他人の純粋な感情と出会うとき。虚飾に満ちた表現方法をとらない瞬間の感覚を見たときです」

―感情(不安/怒りなど)をコントロールすることを身につけるために必要なレッスンとは?

「言葉と表情の重要性を知ることです。案外短期的感情は根源的欲求、つまり食欲や性欲などが原因だったりします。それを言葉と表情で表現する。興奮する自分がまた感情を刺激する。知ることで改善に向かえるんじゃないでしょうか」

―今あなたが「希望」を感じることは何ですか?

「日本が世界でブームになりつつあること」

―音楽で世界を変えることができる?

「音楽は文化の一つです。文化は世界を変えることができます。銃弾は防げずとも、銃を握る人の心は変えることができる。音楽は、耳から進入し脳を食い尽くす。僕らは音楽という武器で世の中を変えていきます」

  どうだろう。こんな彼がつくりだす音楽を聴いてみたくないか? そしてこれも断言できるのだが、その楽曲は打ち込みやヒップホップ以降の手法を咀嚼しつつもポップさを失わず、ミクスチャーならではの各要素の多層的な融合を果たしており、そのバランス感覚に驚かされること間違いない。リアリティ抜群のラブソングドもまたグッとくるんだよな〜。

http://sound.jp/loc/home.htm

Interview&text : Eiji Kobayashi


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