6月13日(土)に初のワンマンライブ「一夜限りの金魚廓」を開催する珠麟(しゅりん)。ライブステージでは時に21歳とは思えない大人な表情を見せ、ジャジーかつポップなサウンドで妖艶な世界を歌う彼女だが、本格的に音楽活動を始めてまだ1年あまりというから驚きだ。しかも、ライブでのパフォーマンスを除いては、「作詞、作曲、編曲、演奏、録音、ミックス、マスタリング、全部自分でやっています」とマルチにこなす才女。「基本的にひとりのほうが動きが早いし、自分で作ると説得力が違うから」とさらりと言うが、実は彼女にはそこにこだわる大きな理由があった。
両親も音楽をやっていたために物心ついた頃から歌手になりたかったそうだが、本人が音楽活動を望んでもなかなか思うようにならずはがゆい思いを抱いていたという経験がある。「事務所に頼んで待つばかりではなかなか機会がなく、いざ提供された曲はしっくりこなくて、それを“自分の歌”と言って宣伝することにも違和感がありました。それなら待ってるんじゃなくて、自分でやらなきゃと思って作りはじめたんです」。
人に頼らないと決めてからの行動は早かった。「自分で曲を作ってそれを聞いてもらうこと」を目標にしてDTMを始めようと思った彼女は、「パソコンとオーディオインターフェースとマイクを適当に買ってきて、それまでパソコンに触ったことがなかったので、まず立ちあげるのに1時間くらいかかったんですけど(笑)、そこから見よう見まねで1週間で曲を作ったり歌ったりできるようになりました」。そして珠麟の名で本格的に音楽活動を開始する。
珠麟とは少し変わった名前だが、由来は「珍珠鱗」という金魚の名前をもじったものだという。金魚といえば、彼女の音楽活動のモチーフの核となっているもので、「音楽性としていろいろ連想させていくのが好きで、自分のやりたい音楽と、好きな和の世界を考えた時に、結びついたのが金魚だったんです」とその理由を語る。そして、その金魚が泳ぐ「水」も彼女が好きなイメージのひとつ。「水は光も屈折するし、器が変われば形も変わるし、色を入れれば見え方が変わる。そういう意味で透明な自分でいたいし、珠麟はその中で自由に泳いでいる金魚でいたい」。
オリジナルの歌詞については、「子供の頃から自分の感じたことをメモしていたノートを読み返して、昔の自分や感情をピックアップして物語を作ることもある」というか、「私としては深い意味を掘り下げて作ってるわけではなくて、ほとんど面白おかしく笑い飛ばしてくれたらと思ってます」という。とはいえ、金魚のたとえに象徴的なように、歌詞には連想を誘い深読みしたくなるようなフレーズやメタファーがところどころに散りばめられ、掴もうとすると逃れていくようにイメージが明滅する。「自分自身でもまだ何が魅力なのか、自分でどこをこだわって表現していけばいいのかもまだわかってないところがある」と謙遜するが、彼女の中にある表現への欲求の純度、エネルギーとイメージの強度は明らかだろう。ライブでは蠱惑的なステージと情感あふれるサウンドと相まって、脳内を撹乱されるような高揚感でその場を満たす。
「自分で作ったものをちゃんと表現して、聴いて認めてもらいたい」という想いは、この1年間で確実に形になってきている。初めてのワンマンは、ミニアルバムのお披露目も兼ねたこれまでの成果の発表であると同時に、アーティスト珠麟として新たなファンを獲得し、次なるステップへ上がるスタートでもある。「まだまだ未熟なので、作曲の理論も勉強したいし、これからいろいろやっていったら、もっと面白く化けれるんじゃないかと思って、成長に自分自身で期待しています」と、その姿勢はあくまで貪欲だ。
今回のワンマンでのサポートメンバーは、珠麟曰く「化け物」揃いで、ステージは「百鬼夜行」のイメージがあるという。自身でデザインした衣装も当日のお楽しみ。さて、どんな幕が上がるのだろうか。
Official website:http://shurin.info
(ライブ情報)
珠麟レコ初ワンマンライブ
「一夜限りの金魚廓」
2015年6月13日(土)
出演:珠麟
会場:六本木 morph-tokyo
チケット:前売り \3,500/ 当日 \4,000 (D別)
時間:OPEN 18:30/ START 19:00