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 日本のロック、ポップス界に多大な功績を遺しながら、惜しまれつつ1月16日にこの世を去った音楽プロデューサー・佐久間正英氏のプロデュース作品をコンパイルした2枚組アルバム『SAKUMA DROPS』がリリースされた。1978年の「東京ワッショイ」から2013年の「Last Days」(マスタリングにOKを出した夜に息を引き取ったという文字通りの遺作となった)までの35年間、約140組のアーティストの中から、DISC1の「当然、入れなければいけない売れた曲」から、DISC2の「売れた売れないに関わらず印象深かった忘れられない曲」まで、全34曲を自ら選んだベスト盤作品集だ。

 佐久間氏以前の日本での「プロデューサー」がいわゆる制作統括的な責任者という意味合いが強かったのに対し、世界でも認められたミュージシャンであり、マルチプレイヤー、コンポーザーであり、自作のスタジオも持つ氏は、作品制作に関わるあらゆることに精通した本格的なサウンドプロデューサーとして、80年代以降の日本のロックシーンを裏で牽引した人物となった。BOØWY、GLAY、JUDY AND MARYなどミリオンセラーを飛ばしたアーティストを手がけるだけでなく、結果的に商業的な成功は収めなくとも、才能ある個性的なバンドに対しても等しくエネルギーを注いだ。

 今回、DISC2に「ダンボールに囲まれて」が収録されたウラニーノは、morphでライブを行っていたインディーズ時代の2007年から、昨年の最新アルバム『音楽はあるか』にいたるまで、氏の生前に最後まで関わりのあったバンドだ。実はこの欄でも、2010年にプロデュースした彼らの作品のレコーディング中に、佐久間氏にインタビューをしたことがある。その時に、プロデュースワークとは実際にはどのような仕事なのか尋ねたところ、「すごい具体的な仕事なんです。どう録音する、どう演奏させる、どう音を作るといった技術的な仕事が基本です。ただ、その“どう”というのを、バンドごとに探りながら、いい形を引きだせるように徐々に持っていくようにしていきます。音楽ってやっぱり最終的に人と人の関係だと思うんです」と答えている。その語り口は穏やかで、仕事に対する姿勢も驚くほど謙虚だったことを覚えている。

 ウラニーノの山岸賢介(Vo&G)は最初にプロデュースを依頼した『友達の彼女』のレコーディング時のことをこう振り返る。「レコーディングが終わった日に、佐久間さんがブログで『僕のプロデュース歴の中でも思い出に残る作品』と書いてくれて、すごく嬉しかったんです。2作目からは、緊張もほぐれて色々相談したり、冗談を言い合いながら楽しい雰囲気で接することができるようになりました。音楽のことは本当にたくさん勉強になったんですけど、佐久間さんは商業的な音楽にものすごい携わってきたにも関わらず、目の前にある“音楽”をいつも楽しんでいました。そういう部分で何度も気付かされましたね」。同じく小倉範彦(D)も、「ドラマーとして何が正解なんだろうと細かいことで悩んでいた時期に、これでいいんだ!と思わせてくれた人ですね。それがすごい自信になりました」と感謝する。ウラニーノの曲の中から「ダンボールに囲まれて」が選ばれていることについて山岸は、「この曲は、“シングルっぽいもの”をと試行錯誤していた時期に、むしろ思い切りウラニーノの色を出したものをやろうとリリースした曲なんです。そういう意味では、最後にまた僕らの背中を押してくれたのかなと思います」と語る。

 佐久間氏はインタビューでこうも言っていた。「たぶん僕が関わったアーティストに何らかの影響を与えているとすれば、彼らから僕も何らかの影響を毎回与えられています。どのアーティストでも、どんなジャンルのバンドとやっても、一緒にやってるうちに絶対に好きになれる。たぶんそれがプロデューサーとしてのひとつの資質なのかもしれません」。今回、『SAKUMA DROPS』で初めて彼の仕事に包括的に触れる人も、一人の人物がプロデュースしたとは思えないバラエティに富んだサウンドを耳にして驚くことだろう。

 最後に、4年前に佐久間氏から音楽を志す若者へもらったメッセージを再度伝えよう。「いつか上手く“いく”とは思わないで、いつか上手くいくように“する”こと。努力をともなわない夢だけを語らないで、具体的な目標を立てて、どんなに時間がかかっても、真面目にこつこつやることです」。成功はよく準備した人だけに、僥倖として訪れるのだ。

 

佐久間正英プロデュース作品集『SAKUMA DROPS』
特設サイト http://www.jvcmusic.co.jp/sakumadrops/

『SAKUMA DROPS』(ビクターエンタテインメント)
¥3,500+税 VICL-64136〜7
佐久間正英プロデュース作品集・奇跡のコンピレーションCD。
世代を超えて愛され続ける大ヒット曲/レア音源33曲を自らが選曲。
さらに自身の最新作「Last Days」も特別収録された全34曲入り2枚組。

DISC1
1. Dreamin ' - BOØWY
2. Angel Duster - THE STREET SLIDERS
3. KISS IN THE MOONLIGHT - UP-BEAT
4. キスしてほしい(トゥー・トゥー・トゥー) - THE BLUE HEARTS
5. Miracle Play 天使が降る夜 - dip in the pool
6. SUMMER GAME - 氷室京介
7. 暴いておやりよ ドルバッキー - 筋肉少女帯
8. 12月はいつもレイン - SCANCH
9. feminism - 黒夢
10. そばかす - JUDY AND MARY
11. 今宵の月のように - エレファントカシマシ
12. HOWEVER - GLAY
13. 東京 - くるり
14. Happy Tomorrow - NiNa
15. Mr.No Problem - The d.e.p
16. 空に唄えば - 175R
17. プラネットマジック - N'夙川BOYS

DISC2
1. 東京ワッショイ - 遠藤賢司
2. 美術館で会った人だろ - P-MODEL
3. COPY ('79 UK Version) - PLASTICS
4. ヴァージン・コンプレックス - SKIN
5. むらさき - はる
6. Private Eyes - RAZZ MA TAZZ
7. ひまわりの花 - 早川義夫
8. なんかいいこと - エレキブラン
9. コイビト - ROBOTS
10. 君に触れるだけで - CURIO
11. DEEP KISS - BY-SEXUAL
12. 壊れていくこの世界で - PIERROT
13. クローバー - cune
14. ショッキングエクスプレス - オーノキヨフミ
15. 陽の光さえ届かないこの場所で feat.SUGIZO - 雅-miyavi-
16. ダンボールに囲まれて - ウラニーノ
17. Last Days(★最新作) - Masahide Sakuma




Interview&text : Eiji Kobayashi


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