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 現在ではすっかり日本の夏の風物詩のひとつとなった野外フェス。その先駆けといわれるフジロック・フェスティバルが初めて開催された1997年は、台風直撃による豪雨に見舞われ、翌2日目は中止となり、富士山麓で開催された唯一の年になったたことは語り種になっている。しかし、その10年前に、当時の日本のトップアーティストが熊本の阿蘇高原に集結した、オールナイトの野外ロックフェスが開催されたことを知っている若者はどれくらいいるだろうか? そしてそのフェスも一晩中激しい雨が降り続き、一切の風雨を凌ぐ場所のない会場は7万2000人もの人々で埋め尽くされていたことを。

史上最も過酷な状況で行なわれ、“最低で最高のロックフェス”といわれるそのフェスの名は、BEATCHILD。そのフェスの全貌を捉えた映像は長らく封印されていたが、録音のマスターテープが26年ぶりに発見されたことを機に、当時運営に関わった人物たちが中心となって、密かに映画化プロジェクトが進行していた。そしてついに、ライブドキュメンタリー『ベイビー大丈夫かっBEATCHILD1987』が10月26日(土)に全国公開される。

 残された映像と膨大なマスターテープには全てが生のままで残されていた。佐野元春、ハウンドドッグ、尾崎豊、BOØWY、ザ・ブルーハーツなど、当時の日本のロック界を代表するアーティストたちが熊本に集結したのは、1987年8月22日(土)。会場となった野外劇場アスペクタのこけら落としとなるビッグイベントには、全国から若者たちが駆けつけた。当初予定していた観客数の3万人は日ごとに膨れ、7万人を超えるファンが阿蘇に溢れ、スタンバイするスタッフたち、20代を中心とした観客(一番乗りは3日前から開場を待っていた)、レーベルの垣根を超えて参加したアーティストや事務所関係者、すべてが熱気に満ち、12時間ノンストップのオールナイト野外フェスの開始を待ち望んでいた。

だが、その高揚感を一気にクールダウンさせ、悪夢あるいは戦場のような最悪の状況にしてしまう嵐は突然やってきた。周囲のすべてを洗い流し、雨具も役に立たずに泥まみれになった後、ようやく訪れた晴れ間に予定より遅れて夕刻にスタートしたフェスは、夜が訪れると再び激しい雷と豪雨に見舞われる。まさにバケツをひっくり返したようなどしゃぶりの中、ステージ上でも衣装はずぶ濡れ、メイクは剥がれ、アンプが飛び、バックステージは大混乱。体調不良者が続出し救急車で運ばれる人がいても、誰も中止を訴える者はいない。アーティストたちも雨に打たれながら、全力でロックをみなぎらせている。岡村靖幸が踊り、大友康平が拳を挙げ、尾崎豊が叫ぶ。フェスを捉えたカメラは、雷が落ちる中でも避雷針に登って迫力ある映像を撮り続けた。そして一晩中降り続けた雨は、やがて空が白み始めるのに合わせて上がり、まるで一晩で新しく世界を創り直したかのように、やわらかな光が人々と音楽を祝福するのだ。

 あれから四半世紀。バンドの解散やアーティストの死去、バブル崩壊と長引く不況。さらに時代は変わり続け、3.11以降の不安定な社会が目の前にある。26年前、あの会場にいた若者たちは今どこで何をしているだろう? そしてあの時代を知らない若者たちは何を感じてくれるだろう? リアルタイムで当時を知る福田信(音楽プロデューサー)、御領博(同)、佐藤輝(映像ディレクター)、見つかったマスターテープからの膨大なリマスタリング作業を買って出た佐久間正英(サウンドディレクター)は全員60代。「今やらなきゃ、誰も実現できない!」と、映画化が実現した。

 あの日、7万2000人は、そして関係者は、史上最高のフェスを期待した。しかしその一部始終を理想の環境で見ることができた人、聴くことができた人は少ない。ステージから最後方まで、1kmにもおよぶ超スケール。アーティストたちさえも、自分の出番の後はすぐに宿舎に戻された。今回の映画化にあたっては、音質が最高レベルで復元されていることは喜ぶべきことだ。そして、その迫力を再現するのは、大画面、大音量の劇場しかありえないと考え、映画館だけの期間限定公開となった。TV放送、DVD、ネット配信の予定は一切なし。おそらく、今回を逃すと二度と観ることはできないだろう。ありえない場所、ありえないメンバー、ありえない状況での奇跡のロックフェスを、全国の映画館で多くの人に体験して欲しい。

morph-tokyoにテレビ局や
新聞、雑誌のカメラがズラリ!
記者発表はこんな感じで...
白井貴子さん、くまモン、ダイアモンド?カイさんの3ショット

作品情報
『ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD 1987』
2013年10月26日(土)より全国一斉公開!
監督:佐藤輝
音楽監督:佐久間正英
主題歌:ウラニーノ「音楽はあるか」(EPIC Records)
製作:テル ディレクターズ ファミリィ
配給:ライブ・ビューイング・ジャパン/マイシアター
詳細、上映劇場情報などは公式サイトまで。
http://www.beatchild.jp/


Interview&text : Eiji Kobayashi


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