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 連日の猛暑である。○通の汐留ビルが海風を遮断してるんだよ!と悪態もつきたくもなってくる。こんな時にはどんな音楽を聴けばいいんだ? サーフミューッジックはもうオレには効かない。カフェでなごんでる暇など毛頭ない。オレの本能が求めるのは“ロック”だ。言っておくが完全管理されたサマフェスなどクソ食らえ! 欲しいのは魂の叫びだ。その時、スピーカーから呻きにも似た声が聞こえてきた。何だこれは?! すでに意識がもうろうとしていたオレの脳みそは、あっという間にとけていく……。

 チョコベビーズ、この恐るべきロックバンドをどう形容しようか。メンバーは3人、ソラミミストでもおなじみのイラストレーターあんざいはじめ、ライター&構成作家の佐川秀文、プロとして31年のキャリアを誇る名ドラマーの古田たかしからなる。はじまりは18年前、あんざいが知人に誘われたイベントに参加するために、佐川を誘って「お遊びで」結成したバンドだった。以来、お声がかかるたびに仕事仲間を集めて即席のライブ活動を細々と行なっていたという。ここまではよくある話。ところが去年の夏、あんざいの個展会場のBGMに「ドラムの音が延々ながれてたらいいなー」という思いつきから、2人の共通の知人であった古田に助っ人を依頼。日々トップミュージシャンたちをサポートする古田はなぜか魔がさしたのか(?)曲づくりに参加。喜んだ佐川のデモテープが業界をわたるうちにリリースの話がでて……、ついに今年5月に電撃デビュー。

 しかし、トントン拍子にみえるデビューの陰には、根っからの自由人であるあんざいと佐川にかつてないほどの意識改革と技術革新が求められたのであった。「お互い基本的に努力しないですから。切磋琢磨っていうコトバがないんですね。曲づくりにしても壁にぶち当たってはつねに伸びやかに避けてきたんで(笑)。古田クンに頼んだ時にはバンドの地図はもう迷路のようになってましたよ」(あんざい)。そこに古田プロの鋭いメスが入る。「それまでの曲を全部聴いて、ここは使えるけど他はダメとか、構成を組み換えなきゃとか、ひとつづつメモしてったんです」(古田)。予想以上の対応に2人は驚き、奮い立った。「こんなにしていただかなくて結構ですってぐらい身にあまるものだったんだよね。すごくきちんとしたメモで、ふだん会う時の古田クンの印象にはない緻密さと説得力があって感動した」(佐川)。

 とりあえず逃げるのやめよう!とバンドに指針を与えた古田だったが、それが自らの出口をも塞ぐことになったのだと気づく。「毎日仕事できっちりした音楽をやってる時と3人のリハーサルとの気持ちの切り替えが全然できなくて。あれれっ、今の違うよねって思っても、2対1だから僕の方が悪いのかな?って気がしてきちゃって(笑)」(古田)。やはり長年培ってきた2人の性向はなかなか変わるものではなかったのだ。

「自分で作った曲なのにコード見ないと弾けなくて、ライブではそれはなしだよって言われて目の前真っ暗になっちゃった。ロックバンドなんだからって頭ではわかってるんだけどさ」(佐川)。「リリースが決まった時に、お金をもらって聴いてもらうためには本気でやらなきゃいけない!ってモードは変えたつもりだったんですよ。でも実際は体がついてこない」(あんざい)。「うん。申し訳ない申し訳ないって言ってやってるんだけど、言う前と後とで変わってないと自分でも思う」(佐川)。はたしてライブの幕は開くのか。

 限りなく頼りなげで、圧倒的な脱力感漂うチョコベビ。しかし、そこには音楽への限りない愛情と演奏することのよろこびが充溢している。自ら「素っ裸」と称するあんざいの身ぶりは自意識過剰の若者には到底真似できるものではないし、〈石〉や〈墓石〉における佐川の屈折しまくった詞とねじれた魂の雄叫びは本来の“ロック”そのものではないか。自作の〈KAPPA地蔵〉でドラミング全開の古田もサポートに徹するだけではない。そして白眉は、世代を越えた友情を育んだ秘話をもつ〈マンクイマン〉(=人肉喰らい)と、みうらじゅんも絶賛した男汁ギンギンの直球ロック〈ウルフ〉。チョコベビーズをただの中年バンドと甘く見ては大間違いなのだ。

 さあ、すべてをさらけ出した男たちの生きざまを受けとめよ。理性をつかさどる前頭葉も記憶を植えつける海馬も粉砕せよ。空前絶後のサウンドとダイレクトに身体が同調したとき、あなたは人から獣になるだろう。

期間限定オフィシャルサイト
http://www.showtime.jp/music/chokobabyz/

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Interview&text : Eiji Kobayashi


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