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 アコースティックギターによる親しみのある楽曲と元気溢れる歌声で聴くものの心を“ぎゅっと”つかむワカバ。聴いているうちにパワーをもらって、前向きな気持ちになれる。「やりたいことやればいいさ/悩むよりやってみようよ/今日精一杯がんばっていれば/明日が迎えにくるさ」〈きらく〉。まるで自分のために語りかけているように聞こえる、そんなファンの声も多い。レコーディングの合間に時間をつくってくれたワカバに、その魅力の秘密を訊いてみた。

 はじまりはよくある話。亀田大、松井亮太、ともに介護福祉の専門学校のクラスメイトだったという2人が、共通の趣味をもとうとはじめた曲づくりがスタートだった。オリジナルの楽曲を公園や路上で歌いだすうちに、気がついてみれば大勢のファンに囲まれ、彼らは本格的にミュージシャンとして歩みだす。もちろん「趣味を仕事に」なんてまったく意識してなかったことだった。

「ギターを始めたのは高校生の時ですね。バンドをやりたいとかではなくて、趣味みたいなものっていうか。親戚のおじちゃんが長渕剛の〈乾杯〉を弾いたのがかっこよくて、それに憧れましたね。それで教本を見ながら歌謡曲とかを覚えたりして、ギター弾きながら家で普通に歌ってました」(松井)。「僕は専門学校で松井くんに会ってからです。ほんと気軽にはじめたんですよ」(亀田)。でも、やるからにはと彼らは決意した――ストリートで歌おう!

 しかし、曲はなんとかつくれるものの、2人では歌詞が思うように浮かばなかった。そこで詩を書くのが趣味だったというこれまた同じクラスの、塚本伸男が加わることになり、曲が完成。せっかくだからグループ名をつけようと考えた彼らは、「音楽に対して初心者」であるからと、自ら“ワカバ”と名づけた。さあ、今度は路上に進出だ。けれどまだ自信もなく、どんな場所がいいのかもわからない。3人のデビューは世田谷の砧公園だった。「練習兼って感じでしたね。しかも昼間は避けて(笑)。通る人といってもジョギングしてる人ぐらいでした。それから代々木公園で路上ミュージシャンがいるっていうのを話で聞いて、僕らも行ってみるかって」

 ミュージシャンになるぞ、という理由のない自信や過剰な意気込みとはまったく無縁だった。彼らのプロフィールには、「介護福祉師免許を取得」というプロフィールがきらりと光る。「ただ好きで、楽しみでやってたんですよ。その時は今のようになるとは思わなかった。弾きながら外で歌う気持ち良さだったりとか、そういうのが面白かったんですね」

 心から歌うのが楽しい!という彼らの陽性のエネルギーは、徐々にまわりへと伝染していく。ライブの主催者に声をかけられて対バンのイベントに参加したり、インディーズのCDを出したり、ついにはワンマンライブを開くまでになった。でも、ワカバは“初心”を忘れなかった。なんと彼らは、2002年に計7回にわたって、文字通り北は北海道から南は鹿児島まで、「全国横断ストリートライブの旅」に出るのだった。振り返ってみると、この体験がワカバを真のミュージシャンに成長させたといってもいいかもしれない。

「車で、場所も決まってたわけじゃなくて、行った先でどこでやろうかって自分たちで探して。本当に“旅”って感じでしたね」。おそらく地方ではまだ無名のストリートミュージシャンとみられただろう。けれど、その歌の魅力はやはりどこへ行っても変わらず感動を生んだ。「知らない人たちが立ち止まって聴いてくれたりとか、毎日僕らに会いにきてくれるような人もいて。そんな時は
最後の日とかは別れが辛くなって、ぼろぼろ涙流しながら歌ったりもしました。行く場所ごとにいろんな人に出会うわけじゃないですか。そういう中で感じたこととか、歌うこと。本当にいい経験でしたね」。この体験から生まれた名曲〈旅日記〉は、2003年に発売された彼らのミニアルバム「とうふ」の冒頭を飾ることになった。

 みんなの応援や笑顔があるから僕たちが歌える。それは、ワカバがファンたちのことを“ファミリー”と呼んでいることからもうかがえる。「ワカバの歌を聴いてくれたり好きだと思ってくれてる人はみんなワカバファミリーです」。そのコトバは、全国で出会った一人ひとりの、そしてまだ見ぬ無数の君たちに向かって語りかけられている。「ワカバのライブは断トツに楽しい!って言ってもらえるステージにしたいですね」。今年も緑輝く夏がやってくる。

Interview&text : Eiji Kobayashi


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