今回紹介するASIAN2(エイジアンツー)は、TATSUとTWENTYによる2MCを擁し、DrumsのHIDE、BassのSHOJI、紅一点のSax、MAKIRON、GuitarのNISHIによるミクスチャーバンドだ。1999年にほぼ今のメンバーがそろい、彼らの地元である長野県の松本市をベースに活動。初期から長野県では爆発的な人気を誇り、2003年に発売された2ndマキシシングル「BRAZIL」では、東京はもとより全国11ヶ所におよぶツアーを敢行。その卓越した音楽センスと、メッセージ性あふれるリリックで、観客のこころを掴んだ。そして、今年3月に3rdマキシシングル「BRIDGE」をリリース。morphにも満を持して登場することになった。
“ミクスチャーバンド”ときいて、なにかわかった気になっている人にこそ、まず彼らの曲を聴いて欲しい。ロックにもファンクにもHIP HOPにも聞こえるだろう。そして次第にそんなジャンル分けは意味がないことに気づくはずだ。「そもそも自分でもファンクやらR&BやらHIP
HOPなんかとの音楽的な境界線がわからない。バンドである、という部分を意識として持ってるだけです」(TWENTY)。実際、その楽曲の完成度は、ジャンルという壁を悠々と超えて、もはやASIAN2サウンドと言うべき確固としたオリジナリティーを獲得している。
TWENTYの言う「バンドであるという意識」とは、TATSUがメインのフレーズを持ってきてイメージをメンバーに伝えることから始まり、「それから音を出しながらディスカッションしていく」という曲づくりのプロセスからもわかる。そして、その共同作業の中で、「自分のイメージとまったく違うフレーズを持ってきたりする奴がいるからバンドは面白い」(TWENTY)のだと。
一方リリックでは、基本的にはTATSUとTWENTYが歌うパートは、それぞれ自分で書いた歌詞になっているというが、いずれにしてもどちらかが主というのではない。お互いのイメージをぶつけることでさらに強度を増す、たたみかけてくるフレーズは、ある種の快感を聴き手に味あわせる。
また、TWENTYが「個人的にはどんなリリックでもポジティブなものが書ければと思っている」というように、ASIAN2のどの曲をとっても、この前向きな姿勢をはっきりと感じることができる。たとえば〈BRIDGE〉では、現状にとどまらずに一歩踏み出すことの重要性を、〈Boys
And Girls Life〉では、喜怒哀楽を全身で感じることの大切さを歌う。
そして、時にそれは、ただ音楽に合わせて意味もないコトバ遊びに堕したフレーズをつぶやくだけの奴らや、曲にこめられたメッセージを受け取ろうとせずにノーテンキに聴いているだけの奴らへの苛立ちとしても表れる。「お前らに任す 歌詞の解釈」(Boys
And Girls Life)/「レコード買って歌詞読め スティービーワンダー」(Gels)/「意味のある歌詞を書き 弾圧が形になる」「この歌の続きを書く君へ/I
sayこれが生きるエッセイ/レコードの奥にこめたメッセージ」(Marchen)……。アジるようにそう叫ぶASIAN2の思いを、ぜひとも聞き逃さずに感じとって欲しい。
ASIAN2という名前は、TATSUIとHIDEが中学2年の時に組んだバンド「アジア太郎」が由来になっているのだが、アジアということ、また松本を拠点に活動していることへのこだわりはやはり強いのだろうか、訊いてみた。「日本人に生まれてよかったと思ってるし、それを誇りに思ってます」(SHOJI)。「地元なり故郷なりを強く盛り上げていくスタイルはHIP
HOP文化の素晴らしいところだと思います。その土地への愛情を前面に出しているわけではなくて、愛情を持っているっていうことを隠していないだけです」(TWENTY)。
彼らの話を聞いているうちに、あるコトバが浮かんだ――リスペクト。そのコトバが持つ本来の意味とは、他者を尊重すること、お互いの差異を認めたうえで相手に敬意をはらう姿勢だ。その対象が、身近な友人、地域から、音楽を通して次第に外へ外へと開かれ、広がり、ついに君と手を結ぶ。そんな魔法のような力が、ASIAN2の最大の魅力である。